「価値ある授業」と評価される漢詩づくり、AIを試す生徒も
高校2年の秋には、漢詩づくり(リンクは実際に使われている教材)を行っています。
まず、作詩の事前準備として前週に漢詩の授業を行います。そして、続く2回の授業で実作。テーマは「送別」。「詩語表」をもとに平仄(音の上がり下がり)の規則や押韻の規則に則って作詩しました。
平仄を確認しながら詩語表から選んだ語句を組み合わせて詩をつくっていく作業は、非常に手間がかかります。生徒たちは決まりごとの多さに驚かされたようで、「決まりごとに違反せず意味の通じる文をつくるのは、まるでパズルを解くみたいだ」と。
AIの利用も可としたので、ChatGPTとやりとりをしながら作詩をした生徒もいました。AIが思いのほか、平仄を正しく示したという意見もあれば、押韻の規則を何度言っても守ってくれないという声もあり、AIを使いこなすにもそれぞれの技量が試されたようです。
一方、自力で辞書を引いて完成させた生徒からは、大変ではあったけれども、「漢詩がいかによく練られてつくられたものであるかに気づいた」「作品をつくり上げていく喜びを殊に感じた」「創造を伴う非常に楽しい体験だった」との意見があがりました。
作品をいくつかご紹介しましょう。

故郷の山を吹く風は故郷への思いをかきたて、悠悠と流れる川は旅人の静かな思いをたたえている。起句承句では、のどやかな春の眺めの中に旅人の故郷への静かな思いを表現しています。転句ではその思いが、夢の中でしか再会できない相手へ向けられたものであることが明かされます。結句では別れの情は僅かだと言いつつも、その思いが細く長く絶えることなく続いていることが見て取れます。景色と感情とがバランス良く表現されていて、夢の中で出会った相手はいったい誰なのか、想像をかきたてられます。

青葉山と七北田宿は日本の地名なので、漢詩にはそのまま用いるべきではありませんが、宮城県への強い思いを持つ作者らしさが出ていると思います。青葉山に沈む太陽、しかし七北田宿までの道のりがまだ遠いことが起句承句で描かれています。転句では別れた人と会えないであろうことに不満を言うまいと。結句で述べられているのは、春風が吹くこの場所を自分の居場所としてまだ受け入れきれていない心情です。直接述べてはいないものの、愛しい人(友人?恋人?家族?)と遠く離れた辛い状況がよく描写されています。

この漢詩は、友人の出立から詠み起こされています。起句では山から吹く風に促されるように、友人を乗せた船が出立した様子が詠まれています。承句では出立から時が経ち、楓樹が色づく季節が訪れて1年が過ぎ去ってしまったことが表現されています。転句では再び酒杯を交わすことができるのは、いったいいつになるのだろうと、別れた友人に思いを馳せます。結句は満天の星の下、夜が更けるまで酒を酌み交わした別れの宴を詠んでいますが、時間軸が前に戻ってしまうので、承句をこれから旅立つ友人を想像して詠んでいるととらえてもよいかもしれません。もう少し推敲するとさらによい漢詩になると思います。
卒業生へのアンケートを見ると、「漢詩づくりはシステマティックだということが実感できる非常に価値ある授業だった」「少ない文字数で物事を表現することは難しい。筆者の思いを読むうえでも漢詩づくりは奥深いものだった」「創造を伴う学習は非常に楽しい経験で、求めていたものに出合えたと思った」など、いい経験ができたと評価してくれる生徒が多いです。また、「高校2年の漢詩づくりが楽しかったので、大学で漢詩のサークルに入った」と報告にきてくれた理系進学者も。創作する授業は、今後も続けていきたいと考えています。
諸子百家の思想が、運動会での下級生の指導に役立つ
高校2年、3年は種をまく時期と位置づけていると言いましたが、高校3年生になると、運動会の仕切りを経験することなどを通して自我の形成が進みます。読解力や思考力もついてきて、思想との対話ができるようになるのもこの時期です。
そんな生徒たちには、儒家、道家、法家、墨家など諸子百家の思想を、それぞれキーとなる概念(忠恕・孝悌、無為自然、信賞必罰、非攻・兼愛)に触れつつ解説し、運動会で下級生の指導に当たるうえで、為政者と自分たちとを重ね合わせてリーダーのあり方を考えてもらうようにしています。
卒業生へのアンケートに「高校3年の運動会を通して考えていたことが、その時期の漢文の授業内容とリンクすることが多くて驚いたし興奮した。漢文はずっと読み続けたい」という回答がありました。また、「高校2年の倫理の授業で中国思想を学んだあと、高校3年でその原典とも呼べる漢文を学ぶことができて理解が深まった」と、ほかの教科との繋がりを実感する声もいくつもあがりました。
高校3年に対しては、その後は大学入試も意識しつつ、さまざまな教材を読んで種まきを続けます。「漢文ずっとサボっちゃったよ」という生徒も当然いますから、耕し直したり、肥料を足したりも行いながらではありますが。
中学2年から高校3年までのおよそ150時間で漢文を学んだ生徒たちは、自力で漢文を読める力をつけて卒業していくことになります。
平仄や押韻などの規則を確認しながら漢詩をつくっていく。「ChatGPTを使うなら、みなさんが漢詩の規則をChatGPTに教育してください」




