授業というものは、一回一回が一度限り。その場で消えて行ってしまうものです。一方で、言葉の学習には繰り返しがどうしても必要で、授業だけで英語は身に付くものではありません。だから、生徒たちには家に帰ってからも英語に触れてもらいたいし、後から授業に戻りたくなったら、いつでも好きなところへ戻れるようにしたい。そう考えて、生徒たちの学習を支えるために、三つめの特徴である「学校の授業が家庭に入り込める仕組み」と四つめの特徴である「戻りたい学習項目にいつでも戻れる仕組み」を作りました。

言葉の学習には繰り返しがどうしても必要ですし、授業だけで英語は身に付くものではありません。それを念頭に教材づくりにも取り組んでいます
教員は「家で学習しておけよ」とよく生徒たちに言います。授業のあと、宿題の形で問題を解いたりすることは、どの教科でも行いますが、外国語である英語を学習する場合、音声はどうすればいいのでしょうか。言葉を学ぶのに音声を切り離してしまうわけにはいきません。しかし、音声を家庭に入り込ませることは、実はなかなか難しいものです。
「NHKラジオ講座」という大変優れた教材があり、私も生徒たちに聴くことを強く勧めています。しかし、勧めてはいるものの、よほど意志の強い生徒でなければ聴き続けることができないのもまた事実。それならば、学校で普段授業を受けている教員の声で英語が読まれ、ポイントが説明され、聴き手が発話することを促すような音声教材が用意できないかと考えました。こんな教材があれば、授業中に「続きは家で」とすることで、学校の授業を家庭学習に自然に入り込ませることができます。
そんなアイデアが浮かんだのは、中学時代の恩師が自分の声で単語を発音したカセットテープを作成し、希望者全員にダビングしてくれたことを思い出したからです。家でも英語を勉強する機会をつくることに、先生はこだわられていたのでしょう。私にも同様のことができたら良いと考えました。以前からそのように思っていたのですが、気がつけばカセットテープの時代から時は流れて、音声ファイルを簡単に共有できる時代が到来していました。これは「恩師の思いを引き継いで、今度は私がやるべきことだ」と強く感じました。
そこで、まずテスト前の家庭学習で使うことを想定した音声教材を作成し、さらに、夏休みなど長期休業期間用の動画教材も作成しました。休業期間の課題として休みごとに小冊子を配布しますが、その答え合わせを私の解説動画を見て行うようにしたのです。これにより、生徒たちは休み中に家で動画を見ざるをえないという状況になりました。学校の授業が家庭学習に入り込める仕組みとして、期待以上にうまく機能しているのではないかと思います。
動画で授業内容を配信、過去に遡って学び直せる
「戻りたい学習項目にいつでも戻れる仕組み」を作るために、今の学年では毎回その日の授業内容の動画を作成し、配信してきました。この動画の視聴対象は、その日の授業を欠席した生徒や復習としてもう一度授業を聞きたい生徒ですが、実は目的はもう一つあります。
先ほど中学3年間は、英語学習においては体系的な知識を入れて基礎を固める大切な時期だとお話ししました。一方で、ちょうど難しい年頃にあたり、すぐにイライラしたり、心が散漫になりやすいのもこの時期の生徒の特徴です。つまり、英語学習において大切なこの時期は、必ずしも語学の学習に適した時期ではないのです。そのため、授業に身が入らなくなってしまう生徒が開成にもたくさんいます。
中には学習から完全に気持ちが離れてしまう生徒もいます。しかし、そのような生徒もどこかで気づき、「このままではいけない」などと言いながら戻ってくることが多くあります。そんなとき、戻りたい学習項目に戻って再スタートが切れる仕組みを作りたい、という思いもあって、授業内容の動画の作成と配信を始めました。
生徒が勉強に目覚める時期には個人差があります。中学3年生でも高校2年生でも、場合によっては卒業後でも、戻りたくなったときに、戻りたい場所から始めてもらえたらいいと考えています。
中学2年「to不定詞」の授業の様子と、オンラインで配信した「to不定詞 振り返り」と「夏休み宿題」の授業動画




