教師と教員との違いを考えることがあります。古くからある問いです。我々の仕事を削ぎ落すと、「授業」と「生徒対応」とが残るように思います。私たちは授業で信頼を得た後、はじめて生徒に対峙し、想いを伝えます。ただ繋ぐこと、礎になるためにです。
そんな環境の中、子供たちは全身で風を受け、無邪気に舟を進め、目一杯に育まれていきます。
「開成は、いったいどんなところだろう」...ふと、そんなことを思いました。
素描...何かを表出、表現するとき、輪郭線はかえって邪魔になり、時に嘘となります。光に照らされ、陰影で浮かび上がるモノにこそ真実がある。開成での関係は言葉を生み、グラデーションをなし、シームレスな時空間を形成している。そこに何かを分け隔つモノは存在し得ないようにも感じます。
何人かの教員に「授業とは何か」ではなく、「自身は授業で何をしているか」を尋ねてみました。
ここに「開成」を素描しようと想います。
数学科 松野陽一郎

これから伸びていく人たちのために、数学にできることは何か―――と、かれこれ30年近く考え続けてきました。よく言われるのは、「論理的思考力を養う」とか「情報を整理する力をつける」といったことでしょうか。でもそれって数学に限らず他の学問をやっても磨かれる力ですよね。だとしたら、数学だけにできることっていったい何なのか。……