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英語科 青栁良太
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第3回 文法が通用しない、英語の理不尽さも共有する
英語科 青栁良太
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言葉の人間らしさや身勝手さを知り、一緒に楽しむ

二つめは、生徒たちと自然言語の理不尽さを共有したいということ。

たとえば、ジョン・レノンの楽曲『Imagine』の歌詞にある「There’s no countries.」について、「なぜcountriesと複数形なのに動詞がisなのでしょうか」と疑問に感じることもあります。

自然言語は誰かが学習者向けにつくったわけではないから理不尽なのです。生徒たちは効率良く学びたいのに、自然言語の理不尽さにしばしば裏切られることになる。中学生が理不尽さを理解して受け入れ、効率良く筋トレできるようにサポートするのも私の役割だと心得ています。

一方、高校生になると理不尽さを理解したうえで、超越していますから話をしていても本当に面白い。「言葉はなんだか人間らしいですよね」などと言ってきます。そうなんです。言語は人間の産物。だから言葉はなんだか人間っぽいし、わからないことも多い。言語の学習を通じて、人間らしさ、つまりわかり合えない部分があってこそ人間であることを知ることにもなります。人間一人ひとりに個性があるように、単語も一つ一つ性格も異なれば、生息地も違う。言葉の学習を通じて、言葉の人間らしさや身勝手さを知り、わからないことも含めて一緒に楽しめるようになっていきます。

三つめは、外国語の学習者として、独り立ちしてもらいたいということ。

私の授業を通じて身に付けてもらいたいのは、外国語を学ぶときには、こうして学んでいけばよいのだ、という理解です。試験問題が解けることではなく、自分の読みたいものを辞書を引きながらでも読める力、自分の書きたいことが自分の言葉で書ける力です。AIによる自動翻訳ツールもあふれていますが、それを使うのは、栄養素を体内に入れるのに、サプリメントを飲んで済ませるようなものです。自分の歯で噛み、舌で味わい、自らの力で飲み込む「快感」を味わわなければ意味がないと思える視点と味わえる力が、生徒に身に付けてもらいたい基礎力です。これが身に付いてさえいれば、外国語学習は自力で進められます。

それから、英語を自分のものとして使えるようにしていくやり方というのは、他の言語を身に付けなくてはならないとき、あるいは言語以外の何かに出合ったときにそのまま使える普遍的なものだと思っています。卒業後、他の外国語を学ばなければならなくなることもあるでしょう。そのようなとき、どのような構えで臨めばいいか、どうすれば身に付くか、生徒たちにはそこまで教えてあると伝えたいです。

英語の学びで身に付けたものをほかの外国語学習で生かして、外国語学習者として独り立ちしてくれたら、外国語教員としてこれ以上の喜びはありません。


身に付けてほしいのは、試験問題が解けることではなく、自分の読みたいものを辞書を引きながらでも読める力、自分の書きたいことが自分の言葉で書ける力です
(文・取材=平林理恵、写真=稲垣純也)