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英語科 青栁良太
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第1回 英語を“実用の道具”として使いこなせるようにする
英語科 青栁良太
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「実用の道具として、英語を自然に使える土台をつくってもらった」――政府機関のエコノミストとして、日常的に英語を使って仕事をしているある卒業生が、私の授業の印象をそう語ってくれました。在学中に「生の英語に触れること」を繰り返し私から勧められ、入試の時期にシャルリー・エブド襲撃事件が起きたときには、受験勉強そっちのけでBBCやCNNの流す情報を追いかけたそうです。そして、中高時代に身に付いたこの「英語に積極的に触れに行く習慣」は今も残っている、と。

私が授業を通してやるべきは、まさにこの土台づくり。言葉の世界というものはとても奥深く、中高時代にできることは限られています。だからこそ、入口からのこの6年間で揺るぎのない土台を堅実に積み上げておきたい。そんな土台さえつくってあれば、彼らは、深めようと思ったときに、いかようにも自力で深めていくことができるはずです。でもね、言葉って深めても深めてもまだまだ先があるんだ、僕もそこへはまだたどりつけていないんだけどね――。なんてことも伝えながら、彼らと一緒にコツコツと土台を積み上げていく、今日はそんな日々を紹介しようと思います。

青栁 良太(あおやぎ りょうた)/英語科教諭
慶應義塾大学文学部文学科仏文学専攻卒業。2001年に開成に着任。不得意だったテクノロジーに慣れ、授業動画の制作を今の学年では欠かさず続けていることに自分の成長を感じている。フランス語の教員免許を取得したものの“ペーパードライバー状態”なので、生徒が英語で学べる初級フランス語動画を制作・配信することが今後の目標。休日は子供と散歩しつつ、美味しい個人店を探すのが楽しみ。卓球部顧問

現在私が教えているのは中学2年生。英語の語彙と文法の授業を週2回担当しています。英語は週6時間あり、ネイティブスピーカーによる会話やスピーキングの授業もあります。

私が授業を組み立て、実践するにあたって、前提としていることや意識的にやってきたことは、大きく分けて五つあります。その五つはそのまま私の授業の特徴でもあるので、順を追って説明します。

一つめは、中高6年間を前半と後半に分け、知識の定着から運用へという流れで授業を組み立てていることです。

前半の中学3年間はいわば筋トレ時代です。知識を体系的に頭に入れ、定着させて基礎を固めます。生徒たちにとっても負担の大きい3年間となりますが、ここは力を入れてしっかり取り組んでもらいます。後半の高校3年間は、鍛えた筋肉を生かして練習試合を行う時期。知識を拡充し、母語話者の書いた文章を読んだり、話す音声を聴いたりすることを通して、知識の運用を行います。

後半となる高校3年間は、楽しいと感じてくれる生徒が多いようです。それまで聴いても意味不明だった音声の連なりに、パッと意味が見出せたりする瞬間もあり、わかる快感が味わえます。読解にしても聴解にしても、私自身が本当に面白いと思える、彼らにとって触れる価値のある素材を厳選して持ってくるため、内容そのものに興味を引かれる面もあるでしょう。

一方、前半の中学3年間はまさに筋トレ。知識を入れ、ひたすら繰り返して記憶するわけで、決して心躍るものではありません。でも言葉を習得するうえで、最も大切な時期でもあり、その先に進みたければどうしてもここを通らざるをえません。だから生徒たちには、とにかくたくさん言葉をかけて励ますようにしています。「決して無駄な筋トレをさせるつもりはないよ。考えがあってやっていることだから、頑張ってついてきてほしい」「この通りにやれば高校に行って試合に出たときに、絶対勝てる、やってよかったなと思えるはずだよ」と。

「英語は土台が大切」生徒の心に響く先輩たちの言葉

最初の3年間の基礎固めにここまで力を入れるようになったのは、2001年に開成に着任し、中学1年から高校3年まで持ち上がった生徒たちに対して、最終授業で取ったアンケートがきっかけです。回答には「土台となる知識を中学生のときに頭に入れておくことは非常に大切だ」「後輩には、体系的な知識を身に付けるよう頑張ってほしい」といった声がたくさんありました。

実は私自身も、初めて教える開成生の優秀さに驚きつつも、その一方で、彼らの能力からすればもっと英語ができてもいいのではないかなと感じていました。文法体系を頭に入れることは、彼らであってもやはり相当難しいのか――。

彼らは、得た知識を運用したり応用したりすることはとても得意で、推測力も判断力も優れています。でも、こういった力は、正しい方向へと道案内する知識がしっかりしていなければ生きてきません。高校2年や3年になったとき、誰よりも本人がそのことに気づき、ああ、もっと中学1年の頃から基礎を固めておくんだったと悔やむものです。先のアンケートに寄せられた声は、まさにそれだったわけです。

経験者のこの気づきは本当に貴重です。そこで「先輩たちはこう言っていたよ」と、二度目に教えることになった学年が中学生のときに伝えたところ――これは開成の特徴でもあるのですが、先輩後輩の絆が強く、先輩の言葉は彼らの心にとてつもなく大きく響くもので――彼らはしっかり受け止めてくれました。「先輩たちの言う通りだと思うよ、僕もそのつもりで授業を進めるからね」と伝え、「ルールブックを頭のなかに構築させる」ことをそれまで以上に強化する方向で授業内容や教材に手を加えました。

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