シンポジウム「SNS誹謗中傷問題と表現の自由について」報告

去る 11 月 30 日、視聴覚教室にて、「SNS 誹謗中傷問題と表現の自由について」と題するシンポジウムが開催されました。パネリストとして来ていただいたのは、弁護士の石川智士先生(2001 年卒)・工藤友良先生(2001 年卒)のお二人です。中二国語 1 では、二学期前半に六時間をかけ、「ネット上の誹謗中傷」について、授業に取り組みましたが、その発展として、希望者対象に対話型のシンポジウムとして会を設けました。

お二人の弁護士から、「SNS 上の実際のトラブル」「裁判例」「発信者情報開示の実際」「誹謗中傷に対する法整備」など、具体的な場面をもとに話していただき、授業で考えてきたことを、法律的観点から、より専門的、具体的に、そして何よりリアルな迫力をもって学ぶことのできる機会となりました。中二生徒 25 名程に加えて、校長先生をはじめ 10 名ほどの教員が参加、質問・発言も多く、たいへん活発な会となりました。

「厳罰化は、どれほどの効力があるのか」という質問に対する工藤弁護士のお話、「厳罰化といっても、自身が違法行為をしている意識のない人に対しては、自制させる効力がない。法整備も必要だが、誹謗中傷が触法行為であるということを認識するために、小さい頃からのネットリテラシー教育がなにより大切だと思う。具体的に『こういう言葉は、よくない』といった感覚を育てていくことが必要なのではないか」という言葉には、教育の場の重要性を再認識しました。また、「日本国憲法の認める『自由』には制限がないのか」という質問に対して、石川弁護士は、「憲法は表現の自由を認めているが、国民の『自由への自覚』も不可欠である。憲法には、『この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う』という条文がある」と、憲法 12 条を示してくださいました。自由を保証されていることに対する責任を、参加者一人一人があらためて覚悟した瞬間だと思います。

90 分の予定をオーバーして、生徒と両弁護士との対話が続きましたが、最後まで生徒は、とても真剣な眼差しで参加していました。終了後も、名残惜しかったのか、教室に残り、個人的に先輩に声をかけて対話している場面が続きました。開成に脈々と受けつがれている「縦の繋がり」という、かけがえのない財産を目の当たりにした思いです。石川弁護士・工藤弁護士にあらためて感謝申し上げます。