去る 6 月 26 日,中学 3 年生の生徒を対象にした講演会が開催されました.この講演会では,名古屋大学大学院 環境学研究科の香坂玲先生が「30 分で学ぶ 国際的に働くこと 生物多様性・環境条約の現場から」というテーマでお話くださいました.
香坂先生は環境問題の中で,生物多様性の保全と社会の関係をご専門としておられます.また生物多様性そのものに対する学術的な研究のみだけでなく,研究成果を社会へ還元する活動もなさっています.たとえば生物多様性に関する条約の締約国会議 COP10 が名古屋で開催された折には,主催者役としてご尽力なさっていました.
このようなお仕事をなさっている香坂先生に,今回は学術研究から国際機関における働き方まで,幅広い話題に触れていただきました.たとえば環境破壊が進んでしまった時代を踏まえつつ,これまで見過ごされてきた生物多様性の価値を再評価する「遺伝資源」「生態系サービス」という考え方を,いくつもの実践例と共に紹介していただきました.また環境問題は地球全体にまたがる問題であるため,条約を締結するには多国間での調整が不可欠です.今回の講演では生物多様性条約などの場合に,議論の過程をご説明いただきました.香坂先生はこうした国際的な交渉の現場にいらっしゃったので,実際にお仕事をなさっていた上での困難など,肌で感じた経験を聞かせていただけました.
あまり時間に余裕がない中でしたが,講演後には活発な質疑応答もありました.たとえば,ある生徒からは「生態系の価値を取り入れるためのアイデアが紹介されていたが,金銭価値だけで測ってしまって良いのだろうか」といった主旨の質問が出ました.こうした色々な価値観に関する観点からの問題提起は実際にもあるようで,香坂先生は「自分の価値観を大事にすること」を説いてくださいました.
短い時間で詳しいお話が聞けなかったことが心残りである一方,学術への興味,国際的な活動など多岐に渡るお話をしてくださったので,多くの生徒が自分なりの興味を持ってお話を伺っていたようでした.お忙しい中ご講演くださった香坂先生に,改めてお礼申し上げます.